第１章「空虚」

続編。
シリーズ化するつもりは無いんですけど…
何故か連載の匂いがプンプンします。



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「暑っ…」

桃華大学の中庭。
ポプラの木の横に添えられた白いベンチに寝転がりファイルをうちわ代わりに仰ぐ青年。おでこにのせた腕の隙間から真っ青に広がる空と真っ白に浮かぶ雲が見える。近くの木からは容赦なく鳴くセミの声…。

「青い空にセミの声…か」

こういう光景を目にすると６年前に消えたアイツの事を思い出す。
バス停で急に走り出したと思ったら忽然と消えた…オレの幼なじみ。
みんな「夢でも見ていたんだろう？」と誰もオレの話しに取り合ってはくれない。それどころか誰一人アイツのことを覚えてる者がいない。友達も先生も近所に住むアイツの両親でさえも…

まるでもともと存在していなかったかのように…アイツは消えた。
「響…なんだっけ？」
両親の関係からアイツの名字だけは分かるが他はサッパリ分からない。



「お～い奏～！！」

叫びながら来たのは暑苦しいで有名な野崎 誠。
高校からの友達…というか単なるクラスメイト。


「…なんだ野崎か。相変わらず暑苦しいなお前…」
「なぁ悪いけど次の講義までファイル貸してくれない？！」
「何だ、また書き忘れか？」
「いや、昨日ちゃんと書いたんだけど…書き終わってからどこにやったか覚えてなくって！」
「ファイルの管理ぐらいちゃんとしろよ」
「お願い！昨日の所だけでいいから写させて！」
「………。講義までには必ず返せよ？」
「ぅお～！！サンキュー！」

騒々しい野崎のせいで体感温度は２度上昇。
さらに即席のうちわ（ファイル）を持って行かれたのでオレは渋々室内へ移動する事に。


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